エル・カミーノ・デ・サンティアゴ
スペイン・フランス
歩く距離・日数780km 35日
基本情報
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特徴
エル・カミーノ・デ・サンティアゴは、いくつもの出発地から歩くことができる。決まっているのはサンティアゴ・デ・コンポステーラの地で終わる巡礼路であるということ。中でももっとも人気のあるルートのひとつが「フランスの道」。特に、ルート上のパンプローナからログローニョに至る区間は美しく、小麦畑の中に一本道が真っ直ぐ伸び、春先ともなれば、花々が咲き誇り、旅に彩りを与えてくれる。また、数々の歴史的な建造物が残されており、美しい街並みを楽しむこともできる。
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歴史
この巡礼路の始まりは、殉教した聖ヤコブの遺骸に関するお告げを受け、星の光に導かれた司教と信者が、サンティアゴ・デ・コンポステーラで墓を発見したという伝説にちなんでいる。中世ヨーロッパで聖遺物崇拝が盛り上がりを見せたことによりこの伝説が注目され、多くの巡礼者が訪れるようになった。現存している記録によると、最古の巡礼は951年で、最盛期の12世紀には年間50万人もの巡礼者が訪れたという。
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自然
スペイン北部に位置するアタプエルカといった多種多様な動植物が生息する山岳地帯を除けば、ルートの大半は農地や牧場、森、街中をたどる。野生動物を見ることは稀であるが、牛や馬、山羊などの家畜をしばしば目にする機会はあるだろう。ピレネー山脈を越える際には、ナポレオンがスペイン遠征する際に通った「ナポレオンルート」を通過する。険しい山道を連想してしまうが、アスファルトの舗装道、砂利道などが整備されている。
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キリスト教の聖人、聖ヤコブが眠るスペインの「サンティアゴ・デ・コンポステーラ」は、ローマ、エルサレムと並ぶキリスト教の三大巡礼地。1000年の歴史を誇るサンティアゴ・デ・コンポステーラへの巡礼路は主に4つあり、その全てが世界遺産に登録されている。このうち特に人気があるルートが「フランスの道」である。 国境付近にあるフランス側のサン・ジャン・ピエ・ド・ポル、スペイン側のロンセスバージェスを出発地とする人が多い。ピレネー山脈を越えてたどると、780~900kmの道のりになる。1日平均30km歩いて1カ月ほどかかる計算だ。 ピレネー越えは標高差1200m。ちなみに、この道はかつてナポレオンがスペイン遠征の際に歩いたことから「ナポレオンルート」とも呼ばれている。 道中で見かける巡礼者像は必ず帆立貝、杖、ひょうたんを身に着けている。帆立貝は聖ヤコブの象徴であり、巡礼者のシンボルにもなっている。 ルート上には道標が整備されていて、街にも気軽に立ち寄れる。スペインと南フランスの街中には、巡礼者に一夜の宿を与えるアルベルゲ(巡礼宿)が点在する。巡礼手帳をもつ者は誰でも8~15ユーロ、または寄付のみで泊めてくれる。手帳にはスタンプが押され、これが巡礼の証明となる。 この巡礼路のハイライトは、牛追い祭りで有名なパンプローナから、リオハ州の州都ログローニョに至る区間だ。美しいロマネスク様式の石橋「王妃の橋」が街の由来にもなっているプエンテ・ラ・レイナ、「星降る町」エステージャにあるナバラ王の宮殿をはじめ、多くの歴史的な建造物が残されており、美しい街並みも楽しめる。 ブルゴスでは世界遺産に登録されたゴシック様式の壮大な大聖堂がある。ここからカスティージャまでは広大な台地「メセタ」が果てしなく広がっている。スペイン中央部の大半を占める乾燥した高原地帯で、夏は日差しを遮る街路樹がなく、厳しい区間となる。 ブルゴスに次ぐ都市・レオンには、ステンドグラスの美しいレオン大聖堂やロマネスク様式のサン・イシドロ聖堂など見所が多く、旅の疲れを癒してくれる。 メセタを過ぎると、巡礼路中でも難関のイラゴ峠とオ・セブレイロ峠越えが待っている。 緑の多いガリシア州に入れば、サンティアゴ・デ・コンポステーラまでは残り100km。「コンポステーラ」と呼ばれ、中世のカトリック教会では贖宥状の一種でもあった巡礼証明書をもらうには最低100km以上歩くことが決められており、このあたりから急に巡礼者が増えてくる。 サンティアゴ・デ・コンポステーラに到着後は、大聖堂の「栄光の門」が長い道を歩いてきた巡礼者を迎えてくれる。