チルクートトレイル
アメリカ、カナダ
歩く距離・日数53km、3〜5日
基本情報
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特徴
「チルクートトレイル」で最高地点となるチルクート・パス(標高1,097m)への登り区間は伝説といえるものである。ゴールドラッシュに沸いた時代、男たちが全ての荷を運ぶべく、40~50回にわたって峠を越えたとされている。標高差800mに加え、不安定な岩場、急変する天候と、容易に進むことができない。とりわけ難関だったのはゴールデン・ステアーズ(金の階段)で、冬場には1500段全てが凍てついた。峠の終わりにはワーデン小屋があり、寒さと疲れを忘れて休息をとることができる。
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歴史
先住民トリンギット族の重要な交易路であり、19世紀末に起きたユーコン準州のゴールドラッシュによって、その中心地へと至る主要なルートとなった。一獲千金を夢見る男たちが明日を求めて、この道を歩いた。タイヤ川に沿って歩く区間は、鉱業施設やボイラー、電柱などゴールドラッシュ時代の遺物が数多く残っている。アラスカ州ダイアは20世紀に入ってから衰退の一途をたどり、現在はその廃墟が史跡としてたたずむ。
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自然
アメリカ側の発着点となるダイア近辺は温暖な多雨林。これは海から吹く風が湿った空気を運んでくるからで、チルクート・パスを通過する際に冷却され、ダイアの地に多くの雨をもたらしている。森林限界を超えると、こうした大気の影響を受けやすくなるため、激しい雨、雹や雪、強風、霧など厳しい気象条件に見舞われる可能性が高い。峠をはさんでカナダ側に至ると、コースト山脈の雨陰になる。こちらは乾燥しており、大幅に降水量が減る。
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19世紀の終わりに起きたゴールド・ラッシュによって、古くからの交易路は生まれ変わることになった。それ以前は、何世紀にもわたって先住民トリンギット族が内陸部に干し魚やその他の海産物を運び、毛皮や衣類などと交換していた。金脈が発見されてからは、富を求める者たちが大挙するようになった。彼らの目的地であるユーコン準州クロンダイクに至る道はいくつもあったが、チルクート・トレイルは、アラスカ沿岸からカナダ内陸部に向かうもっとも安上がりなルートとして、多くの人々を引きつけた。 一攫千金を狙う者たちは、約1年分の食糧や衣類を携行することを求められた。これはカナダ当局が餓死することのないようにと規定したものであった。 大量の荷物を運んだ男たちのたどった道のりが、今日に至るまで残されている。アメリカ、カナダの2カ国にまたがり、53kmの行程はきれいに整備され、道は分かりやすい。もちろん、当時とは異なり1年分の食糧を持つ必要はない。 トレイルの起点は、アラスカのダイア。往時の活気は消え去ったゴーストタウンだ。川沿いにある森の中を進む。ここには鉱業施設やボイラーなどゴールド・ラッシュの面影を残した遺物が存在している。 20kmほど歩くと、シープ・キャンプに至る。この先のチルクート・パスが難関である。傾斜45度の登り坂、足場の悪い岩場に加え、予測困難な天気がさらに状況を厳しくする。難所ではあるが、この周辺にもゴールド・ラッシュの遺産がたたずんでいる。峠の南東にあるキャンバス製の組み立て式ボートは、雪のついた山ではとりわけ目を引くことだろう。 峠を登りきるとカナダ側である。ここではワーデン小屋が待っている。しっかり暖を取って、後半にそなえたい。 高地から下りはじめ、いくつもの湖が姿を現す。天気に恵まれていれば、輝く湖面の美しさを堪能できるはずだ。そしてトレイルは、亜寒帯の森へと続いていく。峠を越えて北側に入ると、コースと山脈の雨陰に入り、アメリカ側と比べて降水量が少なくなる。 終盤に差し掛かると、ロング湖、リンデマン湖などの景勝地がお出迎え。その先にある、ベネット湖がゴール地点だ。 金を求めた男たちはここでボートに乗り、ユーコン川を下ってドーソン・シティに向かった。彼らの夢、金鉱が待っている地であった。 ※最新情報は現地サイトにてご確認ください。